駆動系統ってどこ ?

「駆動系統」は動力伝達部位。125cc のスクーターに於いての「駆動系統」とは、プーリーなどの一次変速機、クラッチやトルクカムなどの二次変速機、それを繋ぐベルト。トランスミッションも駆動系と言えますが、ここでは「その他」に区分しています。

私が日常スクーターの整備を行う上で、頻度の点で言えばプーリーのメンテナンスが圧倒的に多い箇所です。
プーリーは変速機ですので、エンジンパワーを生かすも殺すも、この部位の整備が大きく関与します。
各メーカーは「ドライセッティング」が基本ですが、経験上「ウエットセッティング」(ウエイトローラーをグリス等で潤滑する方式)の方が良いと思っています。
ウエイトローラーの摩耗も抑えられますし、何と言っても応答が各段に向上します。 但し、極めてこまめなメンテナンスが必須となりますので、メンテを行わない人には不向きなセッティング法に成ります。

ここでは、マメに分解整備を行う事を前提に解説しています。
エンジンパワーの小さい125CC クラスのスクーターならではの、体感出来る程の効果が期待できます(あくまで個人の見解ですが)。
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クランク内部の整備 -01
01
クランクケースを開けます
クランクケース内部の前方がプーリー、後方がクラッチと二次変則です。Vベルトで連結されています。
殆どの原二スクーターは同様の構造ですから、同一車種で無くとも参考に成ると思います。
02
プーリーの分解です。
プーリーホルダーを使わなくても、とりあえず脱着は可能(写真ではラチェットレンチのエクステンションバーを噛ませています)ですが、歪を防ぐ観点から、専用工具の使用をお勧めします。
自分は手軽なのでこの方式でやっちゃってます。
03
プーリーのOH
プーリーを奇麗に掃除してから、ウエイトローラーの摩耗状態をチェック、ウエットセッティングでやりますので、Daytona 製のウエイトローラーグリスを塗布して組み込みます。
汎用グリス、シリコングリス を試してみましたが、Daytona 製の専用グリスが一番長持ちします。
スライダーの接触部(摺動面)にはシリコングリスを、ボス挿入部には汎用グリスを注入します。
04
クラッチの取り外し
せっかくクランクカバーを開けプーリーも外したので、クラッチとセカンダリシーブも分解します。
さすがにここはプーリーホルダーが無いと外せません。
クラッチとセカンダリシーブは同一ブロックに成っていますので、ナットを外して引っこ抜くだけです。
05
クラッチとセカンダリシーブの取り外し
次にクラッチとセカンダリシーブを分解し、掃除をしてからグリスアップして組み込みます。
この時オイルシール類は新品に交換します。
セカンダリシーブに封入するグリスは「Daytona 汎用グリス」を使用しています。
発熱する部位ですが溶出する事も無く、10,000km 程度は問題なく使えています。
06
セカンダリシーブのOH
セカンダリシーブの溝(トルクカムの溝)が編摩耗していないかチェックしましょう。
急加速・減速が多いとこの溝が編摩耗しやすくなります。
スムーズな加速・減速に大きくかかわっている部位です。
07
スタータークラッチの取り外し
プーリーの奥に有るのがスタータークラッチです(GrandAxis100の場合)
AxisZ の場合はエンジンオイルで潤滑されていますが、Grand Axis100 の場合は潤滑切れを起こす場合が有ります。
2ストエンジンならではの構造でしょうね。
コイツが潤滑切れを起こすと、スターターが空回りする、いわゆる「スターターが飛び込まない」現象を起こします。
一見してバッテリー上がりに似た症状です。(バイク屋さんでも気付かないケースも有り)
08
スタータークラッチのOH
構造は至ってシンプルです。
溝にスプリングが差し込んであり、それを空洞のピンで受けローラーを押さえているって感じ。
ワンウエイ構造で、順方向の回転には抵抗となり、逆方向の回転には無抵抗となる構造です。
仕組みが解れば分解掃除もなんて事は有りません。CRC556 で潤滑します。 スタータークラッチは消耗部品です。(と言っても 50,000km 超えたあたりでですけど)
スプリングの側面摩耗がかなり進んでいます。径とバネ係数が似かよった物をカットして流用しました。(これが大成功)
ローラーとピンは未だ行けそうです。
09
クラッチのスプリング破損
参考までに・・クラッチのスプリングが1本折れた時の画像です。
停車した時にクラッチが切れなくなってしまいました。
感じとしては「止まってもズルズル前に行き、発進する時は後ろから押される」様な・・
スプリング単体で販売されていたので、部品代数百円ナリ。
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使った道具類
01
潤滑・グリス類
シリコングリス(信越シリコン)、ウエイトローラーグリス(Daytona)、万能グリス(Daytona)、CRC-556(呉工業)
00
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02
トルクレンチ
E-Value プレセット型トルクレンチ トルク設定範囲:5~25N・m
トルク設定範囲:20~110N・m
大きい方より小さい方が価格が高い
整備作業にはトルクレンチは必須工具です。手ごろな価格の物で十分だと思います。
03
ユニバーサルホルダー
KITACO ユニバーサルホルダー
プーリーやクラッチの脱着時に、回転防止のために使うこうぐです。
価格は2-3千円ぐらいが主流です。 1本有ってもそんなに邪魔になるものでは有りません。
月一位でプーリーのOHをする私には必需品です。 クラッチのOH時にも必需品です。
04
クラッチ用レンチ
上がAxisZ用
下がGrandAxis用
トルク管理よりもコスパを優先しました。
締め付けトルクはゴムハンマーと右手次第・・・